アポロの息子の物語と聞いて興味を持った。
ロッキーの人気に便乗して作られた映画じゃないかと思ったが評判がよいので観に行くことにした。
なにしろロッキーには思い入れがある。もちろん全部観ている。
私にとって、ロッキーとは単なる映画ではない。おそらく、私の世代ではそういう人が多いだろう。
今はスターウォーズの新作が話題でその陰に隠れたような形になっているが、
私はスターウォーズはもちろん知っているが実は一作も見たことがなく、
まったく思い入れもない。
監督はスタローンでも1と5を撮ったアヴィルドセンでもなく、ライアン・クーグラーという若い監督である。
私は作品を見たこともないし名前も知らなかった。
アポロの息子を演じる役者はマイケル・B・ジョーダンといい、もちろん黒人である。
この俳優も知らなかった。というか、スタローン以外誰もしらない。
もうエイドリアンもポーリーもいない。
アポロの息子は実子ではなく、私生児だった。
彼がボクシングをやろうと、それもプロになろうとする動機とか、トレーニングしてタイトルマッチをするまでになる
過程とかはちょっと駆け足な感じもしたが、
アポロの息子がボクシングをやることにもちろん疑問など感じない。
アポロの奥さん役は4とかで演じた女優ではなかったが、少年院に面会に来る彼女の顔を見ただけで涙が出て、
それからほとんどずっと涙が流れっぱなしだった。
いい映画だったとは思うが、なんせロッキーだから、アポロの息子の話だから、感動するのは当たり前というか、普通の映画と同じようには見られない。
映像や演出は非常にクールで落ち着いていた。
音楽も過去のロッキーほどメロディアスだったり鼓舞するようなものではなく、
いわゆるブラックミュージックと呼ばれるものがほとんどで、「アツい」ものではない。
しかし、もう設定自体がアツすぎるので、それでよかった。
ボクシングシーンは素晴らしかった。タイトルマッチの相手役は本物のプロボクサーだそうだ。
リングアナウンサーはあのジミーレノンジュニアで、たぶんミットを受けていたコーチも本物のコーチだろう。
リアリティは今までのロッキーシリーズとくらべものにならないくらいだ。
この映画の主人公はアポロの息子アドニスなのだが、
やっぱりロッキーの映画だ。私にとってはこの映画の主人公はやっぱりロッキーだった。
彼はもちろんもう戦わず、老眼鏡をかけてすっかりいいおじいちゃんになっているのだが、
私はこの映画を見ていてアドニスが強くなって栄光を勝ち取ろうとする姿よりも、
ロッキーのほうにどうしても感情移入してしまう。
観客は年配の人が多くて、すすり泣きもそこらじゅうから聞こえた。
・・・まだこの映画については冷静に語れそうもない。