2007/05/13

太宰治 「右大臣実朝」

「右大臣実朝」を読んでみようと思ったのだが、なかなか読めない。
語り手の卑屈さがむかついてしょうがない。
ときどきはさまれる吾妻鏡の文章が読みにくいので、古文研究法という大学受験の受験参考書を買ってきた。私は古文は嫌いではなかったが理系クラスにいたために初歩的なことしか学んでいない。受験勉強のためだけでない名著として有名なようで、1955年から2007年までなんと100刷を超えている。

実朝という人は頼朝の次男で、29歳で公暁に暗殺されている。
病気がちで文人肌で源氏の最後の男子として夭折したところに太宰が共鳴したのだろう。そういうところが見えてしまうところでも語り手の卑屈さが不快に思える。

しかし日本史というのはハチャメチャである。刀を持ち馬にのって斬りあったり、何人も妾をつくって子を産みまくったり・・・

太宰に話を戻すが、でも太宰というのは生まれついての作家であったと思う。
サーヴィスという言葉がよく出てくる。
作家とはどういうものかをよく表現しているのが、人間失格に出てくる、学生の時に「痰壷にオシッコしてしまった話を悲しそうな筆致で書いて先生を笑わせた」というところだ。


青空文庫。途中からちゃんと読みたくなったので何軒か本屋をまわったがこれだけない。絶版になったのだろうか?たしかに太宰作品のなかでは傑作かどうかはさておいて人気がない作品であることは確かだろう。私も今ようやく読んだくらいだから。

前半は実朝を卑屈なまでにほめたたえているところが気持ち悪かったのだが後半になるとこれはホメ殺しなのかと思えてくる。まるでバカ殿かドンキホーテのような。寺村輝夫の「ぼくはおうさ」まのような。
興ざめなふんいき、暗い、卑屈な、はにかんだように笑う人間。こういうものを太宰は憎んでいたと同時に自分の中にそれを認めざるを得なかった。それは人間失格では全面的に自分で背負っているが、「実朝」ではまだ、敵として非難の対象になっている。

あと、酒。何度も、酒を飲むけどハメははずさない、一線は越えない、みたいないいわけが出てくるが、実際のところ実朝は酒飲みで歌にうつつをぬかすダメ人間、将軍失格、というふうになってしまった。

実際の実朝がどうだったのかも非常に興味がある。「金塊和歌集」の名は私でも知っていたくらい。相当のものなのだろう。頼朝の次男、鎌倉幕府の3代将軍、源氏の最後の将軍が、頼朝の長男すなわち実朝の兄の子供すなわち実朝の甥に殺されるという悲劇。このこと自体がすでに大変なドラマであり、これはこれでどういうことだったのかはもう少し知りたい。

が、それはさておいてこの「右大臣実朝」という作品についてだが、読後に「なんともいえぬいやな興ざめの気分」が残る。実朝を賛美しているのか、哀れんでいるのか、バカにしているのか、自分を重ねているのか、その辺が揺れてしまって筋が通っていないように感じる。

最後のほうの公暁のセリフには、「駆け込み訴え」のようだ。「駆け込み訴え」を読んだ時はなかなか小気味よかったのだが、実朝の公暁にはそれがない。非常に暗い、シャレにならないような、「引く」ような感じ。
不吉な不気味な予兆というのは「斜陽」にも出てきたけど、太宰はそういうのが好きなのだろうか、何か意図があってやっているのか、誰かのマネをしているのかわからないが気持ち悪い。

またこの女が卑屈なまでにへりくだる語り口は芥川を感じさせる。
しかし女の腐ったようなイヤな雰囲気は太宰の方が数段上である。

2007/05/10

太宰治 「火の鳥」

太宰の未完の長編とやらが青空文庫にあったので暇つぶしに読んでみた。
安っぽいテレビドラマのようだった。「富嶽百景」と同じ頃に書いたらしいが。
続いて坂口安吾がほめていた「男女同権」、「親友交歓」というのを読んでみた。
傑作だろうか?私は好きではない。「男女同権」のほうは「人間失格」のやけっぱちの原型のようなものが見える。「親友」のほうは、前にも読んだが、とにかく後味が悪い。

それからつづいて太宰に関する評論のようなものをパラパラと読んだ。
そして、今日、思ったのは、もしかして太宰は変人ではなく、普遍的なのは太宰のほうなのではないか、ということである。
太宰は性格破綻者で破滅型で無頼派であるという人々、生活に嫌な雲があるとか言う人、酒さえ飲まなければとか言う人、そういう常識人ぶった人の方が実は変人なのではないか、ウソなのではないか、太宰のような照れ屋で自意識過剰でやさしくてスケベで酒が好きで女が好きなようで嫌いで、という方がほんとうなのではないか、いつまでもいつの時代でも彼が人気者なのは彼が普遍だからではないか、なんて、彼が死んだのとほぼ同じになった今、思う。

2007/05/09

night on earth



なぜ邦題は「オンザプラネット」なのか。
これでジャームッシュ作品は全部見たかと思ったら10ミニッツオーダーという映画の中で
一編作っているようだ。

dead manのワイド版だかなんだかがやっていたのでまた録画して、何が違うのかと思ってもう一度みたけど何も違わなかったけどやっぱり傑作だったけど最後の一時間はすごく眠くて少し寝てしまった。